ブラック企業で働いた新卒の話part4

今就職活動中の君!!

 

会社選びは慎重にね!!
でないとお兄ちゃんみたいにブラック企業で働くことになっちゃうよ!!

 

 


とまあまたしても前回の続き。

さーて、今日も楽しく懐古しちゃうぞー!

 


<続き>
意を決して車から出て、お客さんの元に向かうと一際大きい声で
「こんにちは、初めまして!!今回◯◯様の担当をさせて頂く◯◯社の◯◯という者です。この度は、何卒、よろしくお願い致します!!」
と自分の弱気を吹き飛ばすように元気に挨拶をして名刺を手渡した。
「ああ。◯◯(会社名)さんね。◯◯さんには一番期待しているから是非ともよろしくお願いしますね。」
「はい!ご期待に応えられるよう、精一杯やらせていただきます!」
と、僕的には不自然なくらい元気に挨拶した。
良かった。噛まなかった。
緊張しているのばれてはいないだろうか。
心配で仕方がない。

相手はダンディなおじさんだった。
僕は女性が苦手なのでお客さんが綺麗なお姉さんじゃなくて良かった。もしそうだったら今の挨拶で8回くらいは噛んでいただろう。おじさん最高。

そして査定車の近くへ向かった時、僕は愕然とした。

黒づくめたちを近くでよく見るとめちゃくちゃ強そうだったのだ。
ドラクエのラスボスの方がまだ簡単に倒せそうだよ。
まあつまりはかなりのベテランっぽかったてことで。
僕よりも確実に年齢は上だろうし。


緊張感がさらに高まった。
多分この時このラスボスたちに
「てめえみてえなペーペーは邪魔だからさっさと帰れや!」
とか言われてたら僕は光より速く逃げていただろう。


まあでもここまできたらもうやるしかないので僕は急いで車の査定に取り掛かった。
ちなみに僕の当時の車の査定能力は多分新卒社員中でも一二を争うくらい低かった。
だってこの前までクラウンのことを外車だと思っていたアホですよ。
そんな奴に1か月やそこいらで車なんていう精密機械を熟知しろなんて無理な話でしょう。
そんな事が僕にできたら今頃世界にはタイムマシンができてるっつの。

なので僕の車の査定は必要最低限のところしか見れないので5分くらいで終わる(通常20分くらいかかります)。残りの15分くらいはなんかそれっぽい動きをしてお客さんの目をごまかすことに徹する。
おそらくこの15分は世界平和のことを考えていた方がちょっとばかし有益だ。
それくらい無益な15分だ。

車の査定で一番大事なことは『事故をしてるかしてないか』だ。それくらいなら誰でも見るところさえ教えて貰えばある程度はわかるようになる。でもどうしても分からない時はお客さんとの会話の中でなんとなく探りを入れてみる。お客さんが事故をしているといえば
「いやー、見ていて◯◯が少しおかしいと思ったのでやっぱりそうだったんですねー。」
とか当たり障りのないことを言ってごまかす。

必要最低限のところだけを見てその査定情報と車両写真を撮って本部にデータを送れば本部の査定部門が勝手に値段を算出してくれる。

これでド新人でも車の査定ができてしまうのだ。

科学の進歩って素晴らしいですね本当。


でもこの時は少し状況が違った。
送る情報などを大きく間違えてしまえばこの車両の場合、最悪100万単位で赤字が出てしまう。
そんなことをしたら店舗の成績は大きく下方修正されてしまう。

それは絶対やってはダメだ。

そう思えば思うほど僕は緊張で思うように体が動かなくなった。

ミスは許されない。

 

それは大きなプレッシャーとなって僕の心にのしかかった。

もう精神を宇宙に飛ばしてる場合ではなくなってしまった。

本気で考えなければ。

何かヒントがあるはずだ。

 

僕が思考に思考を重ねている時、横から黒づくめのラスボスが近づいてきた。

やめろ。お前の顔を見るだけでちびりそうになるから今は近づくな。

そう願ったが、僕の願いとは裏腹にラスボスは僕に話しかけてきた

「いやー、これはまずいですよねー。◯◯(会社名)さんはどう見ますー?」

と聞かれたので僕は精一杯の笑顔で
「いやー、僕も今そう思ってるんですけどねー。もうちょっと見てみないとなんとも言えないですねー。」
と、お茶を濁しながら逃げるようにラスボスから離れていった。

ふぅ。なんとかやり過ごした。とりあえずちびってないかだけ帰ったら確認しておこう。だっておしっこっていい匂いしないもんね。

そのあともラスボス達は車の査定をしながら他社同士で話をしていた。
結構近くで話すものだからちょくちょく会話が耳に入ってくる。

「ここ、イっちゃってますよねー。やっぱり。」
とか
「◯◯さんとこ何点でいきます?」
とか

なぜか僕を不安にさせるような内容しか耳に入ってこない。

ダメだ。
俺には荷が重すぎる。
プレッシャーと尿意から早く解放されたい。
なんで俺がこんな目に。
おのれ、店長。
なぜ俺にこんな案件を任した。

 

 


店長・・・。


そうだ!!店長いんじゃん!!


わかんなかったら電話しろって言ってたじゃん!!


と、ここでようやく店長の言いつけを思い出した。

僕はお客さんに見えないところまで行ってからすぐに店長に電話を掛けた。
コール音がなって5秒程すると店長が電話に出た。


「ハロー。」

「お疲れ様です、店長。ここアメリカじゃないです。あと俺今大ピンチです。」

「ワッツ?」

少しだけ殺意が湧いた。

「店長、ふざけてる場合じゃないです。今わかんないことだらけです。」

「んもぉー。何がわからないのかな僕ちゃんはぁ。」

上司でなかったら助走をつけて殴ってるところだったが僕は状況を端的に説明した。

「・・・という感じです。」

「なにお前、そんなことでいちいち電話かけてきたの?」

「はい。」

「ショボ。」

「ショボいのは18歳を過ぎたあたりから自覚しています。とにかく今俺はどうしたらいいんでしょうか?」

「どうしたらいいもなにも、お前なにしに言ったの?」
少しだけ店長の声色が変わった。
「車の買取商談をしにきました。」

「じゃーやれよ。」

「それはわかってはいるんですが、いかんせん状況が状況なので。」

「なに。失敗するのが怖いの?」

「はい。」

「アホか。お前が失敗したところでそれはお前の責任じゃなくてお前の上司である俺の責任だろ。何をビビる必要がある。」

「そうは言いましても。」

「あのなー。はっきり言ってやるけど別にお前にその案件任したところでお前がどこで失敗するのか想定済みだし、もう手は打ってあるから安心しろ。別にお前に数字を期待してはいないから。お前のミス程度で揺らぐ俺じゃない。すべて想定の範囲内だ。いつも言ってるだろ。好きにやれって。」

「そうなんですか。でも・・・」

「ああもう面倒くさい。わかったよ。じゃーお前に今から武器を授ける。アルテマウェポンナミの奴をな。」

「そういうの待ってました。」

「そもそもお前今のこの現状がすでに他の営業マンより優位に立っていることに気づけ。」

「そうなんですか。」

「そうだよ。だってお前にはこの天下のスーパー大店長がついてるんだからな。それこそアルテマウェポンだ。」

「そうなんですか。」
「なにその失望した感じー。超心外なんですけどぉ。」

「店長が素晴らしいお方だってことは重々承知しています。でも店長は今この場にいません。故に私は木の棒でラスボスに挑まなければなりません。」

「まあそう急くな若者よ。いいか。今からお前は俺の言われた通りのことだけ遂行しろ。そうすればお前に必ず契約させてやる。」

「わかりました。」

「まず深呼吸をして周りを見渡せ。」

「はい。」

「何が目に映る?」

「他社と車とお客さまです。」

「その営業マンたちには勝てそうか?」

「いえ、全く。」

「だろうな。そういう車に群がる羽虫どもは大抵は少しだけ経験を積んだ羽虫どもだ。まだ精子にもなっていないお前では到底かなう相手じゃない。」

「おっしゃる通りです。」

「次に、◯◯と◯◯と・・・・・・を写真に撮って俺のパソコンに送れ。査定情報は今回お前は流さなくていい。」

「はい。」

「それだけやったらお客さんのところに行ってなんでもいいからお客さんのことを笑わせろ。」

「はい?」

「その時気をつけることは絶対嘘はつくな。見栄を張るな。分からないことは素直にわからないと言え。それでもどうしても知りたいとお客さんが言ったことだけメモをしておけ。それだけでいい。」

「わかりました。」

「じゃー20分後くらいにもう一度電話してこい。じゃーな。」


プチっと電話が切れた。


『わかりました。』と言ってみたもののよく意図は汲み取れていなかった。


だが、やることはわかったのでとりあえず行動に移してみよう。

僕は店長に言われた通りの箇所の写真をすぐにとってお客さんの元へ駆け寄っていった。

心なしか、ラスボスに見えていた黒づくめ達は中ボスくらいに見えた。

 

 

 

今回はこの辺までにしておこう。

またしても楽しく小説家気分で過去を懐かしんでいたら数時間が経ってしまった・・・。

何やってんだよ。俺。

もうバイトに行かなくては。

早く続き書きたいなー。