ブラック企業で働いた新卒の話part5

今就職活動中の君!!

 

会社選びは慎重にね!

でないとお兄ちゃんみたいにブラック企業で働くことになっちゃうよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけで今日も楽しく過去の話を書いていこうと思いまーす。

 

 

 

 


<続き>
『お客さんを笑わせろ』
という指示を受けた僕はよくわからないままお客さんの元に向かった。

中ボスたちは電話をしてる人間と後の二人はお客さんに見えないところで二人で話し合っていた。

実はこういう光景はこの業界で働いているとよく見る。

僕たち中古車の営業マンはこと『車の買取』においては客観的に見ると何もしていないのだ。

車の買取商談でやることはこんな感じだ。

1,車の査定(事故歴の有無の確認、傷など外装,内装の確認)
2,査定額の算出
3,査定額をお客さんに伝える
4,気に入ったら売買契約、気に入らなかったら帰る
ここで気をつけてもらいたいのは現場に赴いた営業マンは『査定額の算出』ができないのだ。
考えてみれば当たり前なのだが、仮に売買契約を交わしたとして実際にお金を払うのは現場に赴いた営業マンではなく所属企業だ。
会社員なら当然だがお金に関わる判断はある程度の役職以上にならなければできない。当然、見込みがあるかどうかもわからないお客様のもとに出向いていくような営業マンは下っ端だ。よって、その営業マンに値段は決められない。ある程度の相場はわかるが契約を交わす際には必ず上長の決済が必要になる。

各社ともシステムは別々だが、僕の会社の場合は

本部の査定部門が査定額を算出

その情報をもとに店長が各々の店舗の状況だったり独自の勘で決済額を部下に報告

お客様に査定額が伝わる

という感じだ。

もちろん例外はある(たまに決裁権を持った営業マンもいる)が、大体の場合は各社ともこんな感じだろう。

恐らく、車の出張査定を経験したことがある人は嫌な思いをした人が大半だと思う。
ネットの触れ込みで

『簡単査定!!』
『15分で終わります!!』

とか言いふらしてる割には実際にはそんなことはない。

現場に赴く営業マンは何が何でもその場で契約しようとするのでお客さんの『契約します』の一言をもらうまでかなり粘るのだ。
即決をしないと後々面倒なことになるのでみんな実際即決してもらいたいのだ。
法人営業とは違って中古車営業のような個人営業の場合、今の時代はネットの力を使えば顧客なんて山のように作れるのだから。


なのでお客さんはほぼほぼの場合即決する気はないし、聞いていたより時間がかかるので大抵は嫌な思いをすることになる。

 

今回の場合もそんな感じだった。
恐らく電話をしている中ボスは上司と値段の相談をしている。

二人仲良く話している中ボスたちは他社の値段がいくらかその腹の中を探ろうとしている。それか、先輩が言っていた取引をしようとしているかもしれない。


なので僕は必然的に暇をもてあそんでいたお客さんに簡単に近づくことができた。


「お待たせして大変申し訳ありません!!」
僕はお客さんにいつものアホみたいに元気な声で言った。
「ああ、大丈夫ですよ。今日は仕事は休みなので時間がありますので。」
「そうなんですか!それではただいまお車の査定の方は終わったのですが、今本部の査定部門が具体的な金額の算出をしているのでお時間をもう少しだけいただいてもよろしいでしょうか?」

「構いませんよ。」


ちなみに僕が受けた指示はお客様に値段を伝えるのではなく『お客さんを笑わせろ』だ。

この状況あなただったらどうしますか?

初対面の男性をいきなり笑わせる。って、よくよく考えてみるとかなり難しいと思いませんか。

少なくとも僕は上の発言をした時点で全く策などなかった。

一発芸でもやればいいのだろうか?
それともすべらない話?
顔芸?

いろいろ考えたが僕の頭の中ではすべて却下だった。

だって僕が初対面の相手にこんなんやられたらキレるもん。普通に。


じゃーどうしたかって?

僕の答えはこうだ↓

 

 

 

 

 

「いやー、それにしても今日めっちゃ天気いいですね!」

 

 

 

 

 

 

我ながら死んだほうがいいと思う。

 

もちろん相手も笑うわけもなく

「はは。そうですね。最近なかなかこんな晴れる日なかったですもんね。」

と言ってくれた。
ちなみに『はは』というのはいわゆる社交辞令で、これは笑ったうちには入らないと思う。

僕は何も策はなかったがとりあえず、『〜〜ですもんね。』と言われたのでこのしょうもない会話を続けることにした。

「そうですよね。洗濯物が乾かなくてなかなかつらいです。今日も朝起きたら遅刻しそうだったので急いで支度をしたら下着が一枚も乾いてなかったんでノーパンで出勤しました。」

僕的には精一杯の攻めのつもりでこの発言をした。

精一杯頭で考えて絞り出した言葉が下ネタって。。。小学生かよ。

すると

「ははは。そうなんだ。それは大変でしたね。」

と言ってくれた。
今の『ははは』は笑ったに入れていいんじゃないか。実際少しだけ破顔してたし。

下ネタを毛嫌いする人じゃなくてよかった。

ちなみに僕はこの時引っ越しをしたばかりでパンツの数がそこまで多くなかったのでノーパン出勤はよくあった。だから嘘じゃない。汚な。

「まだこっちには越してきたばかりで部屋もまだ整理できていなくて。洗濯物も溜まっていく一方です。」

「へー、そうなんですか。この前はどちらにおられたんですか?」

「千葉です。5月に配属されたばかりなので千葉は実家です。」

「そうなんですか。ということは新人さん?」

と聞かれた。

少しだけマズイと思った。初商談で新人とバレた時お客さんはあまりいい顔をしなかった。
いつもの僕なら見栄を張って適当な言い訳をして新人ではないことをアピールしていたが、店長からの指令の中には『嘘はつくな』『見栄を張るな』という言葉があったので僕は意を決して正直に新人であることを告げた。

「はい!自分はまだ新卒です。名古屋には2週間ほど前に配属されました。ですが、研修やこの2週間で車の査定の知識については織り込み済みですので◯◯様(お客さん)にご迷惑はかけませんのでどうか御容赦していただけると幸いです。」

今度は怒られる前に少し文言を加えてみた。


「はは。大丈夫ですよ。しっかりされていたので新人さんには見えませんでしたよ。」

「本当ですか。ありがとうございます!
 でも正直に言うとまだわからないことも多くて日々勉強の毎日です。」

「いいことじゃないですか。僕ぐらいの年になると仕事で勉強することも少なくなってくるので少し羨ましいですよ。」

「そんなそんな。僕からすれば早く◯◯様みたいに1人前になりたいです。失礼かもしれませんがお仕事は何をされているんですか?」

「私も営業職をしていますよ。まあもう今は管理業務が主体なので私の仕事は部下の帰りをデスクで待つことですけどね。笑」

「そうなんですか!それじゃー僕からすれば大先輩ですね!なんかいきなり緊張してきました。」

「はは。何を言っているんですか。僕程度の営業なんてあなただったらすぐに越えると思いますよ。」

「そんなそんな。パンツを洗い忘れるようではまだまだです。笑
 それでは今までずっと営業一筋なんですか?」

「そうですね。妻も子供もいますし今更仕事を変えようなんて思いません。」

「そうなんですか。それでは部下の帰りを待ってる◯◯さんにも新卒の時代があったんですね。」

「はは。でも僕はノーパンで出勤したことはなかったですけどね。笑」

「それは、、、なんだか申し訳ない。」

「はは。でも本当に最近の新卒にしてはしっかりされてますよ◯◯さん(僕の名前)は。僕の会社に入ってくる新卒はもっとやる気ないですもん。」

「ありがとうございます。じゃーご期待に添えられるようにお車の方も精一杯頑張らせていただきます!それでは、上司に報告をしてまいりますのでまた少しだけお時間頂戴してもよろしいですか。」

「わかりました。」

「ありがとうございます!本当に精一杯頑張りますので何卒、宜しくお願いします!」

 

と言って頭を深く下げ僕は店長に電話をしに行った。

 

実際はもう少し話をした気がするがもう覚えてない。


まあ一応店長の言った通りのことはできただろう。『笑わせろ』の定義はわからないが一応、僕から見れば笑ってはいたし。もちろん、社交辞令だろうが。

でもこのお客さんは話しやすい人で助かった。
僕が話題を提供しなくても向こうからちゃんと話題を提供してくれる。
自然と話が出来た気がする。


電話帳を開き店長に電話をかけた。

「ハロー。」

「もしもし。お疲れさまです。ここアメリカじゃないんで」

「オゥ、ソーリー。」

「とりあえず店長から頂いた指令はこなせたと思います。」

『オゥ、ソーリー』については無視した。

「本当か。どんなかんじに?」

「大笑いはさすがに僕のセンスでは取れなかったですけど、社交辞令程度の笑いなら取れました。相手の方がかなり話しやすい方だったので。どうやら営業職をされているみたいで。」

「何だよ使えねーな。俺だったらそりゃもう大笑い取ってたよ。」

「では是非今度ご教授願います。」

「そんな暇はないね。で、どこまで話した?」

「どこまで話したと言いますと?」

「お前が得たお客さんの情報だよ。」

「情報ですか?えーと、お仕事は新卒の頃から営業をされていたみたいで今は管理職になって毎日部下の帰りを待つのが仕事だそうです。奥さんと子供がいて、そのためにもう仕事を変えるつもりはないそうです。ちなみに僕が今日パンツを履いていないことを伝えたらそんなミスは今までで一度もしたことがないそうです。」

「ほーほー。何、お前今日ノーパンなの?汚な。
 まゆこ〜〜、◯◯今日ノーパンらしいぞ。」

まゆこというのは僕の同期のおっぱいのデカイかわいこちゃんだ。おそらく今店舗で店長の近くにいるんだろう。
電話越しに『キッショっ!』と罵倒をされているのが聞こえた。

何を言っているんだろうかこの人は。


「何の報告をしているんですか。そんなことより僕はこれからどうすればいいんですか店長?」

「今お前の直感でいいからお客さんといい感じかそうでないか教えて。」

「いい感じだと思います。」

「他の奴らは何してる?」

「一人はさっきから結構長い時間電話をしていて残りの二人は車の近くで話しています。」

「ふーん。わかった。ちなみにお客さんはお前が新人なのは知ってるか?」

「はい。知っています。」

「じゃー、お客さんには率直に◯◯万でどうですか?と伝えろ。」

「わかりました。」

「気をつけろ。こっからはスピード勝負だからお客さんがその値段が気に食わないというんだったら、いくらならいいか聞いてこい。」

「わかりました。」

「あとこれからはお客さんの前を離れるな俺に電話をするときもお客さんの眼の前で電話しろ決して他の羽虫どもをお客さんに近づけるな。」

「わかりました。尽力してみます。」


電話を切り急いでお客さんに値段を伝えに行った。

「お待たせして大変申し訳ありません!」

「ああ。大丈夫ですよ。値段の方は出ましたか?」

「はい。◯◯万円とのことなんですが如何でしょう?」

「うーん。やっぱりそんなもんですか。」

「お気に召さないでしょうか?」

「さっきの人もそのくらいと言っていたのですけどね。具体的な値段は言わない約束ですからそこは言えませんが。」
「そうですか。失礼かもしれませんが逆にいくらだったら気に入ってもらえるのでしょうか?」

「うーん、◯◯くらいいったらうれしいんですけどね。」

ちなみに伝えた値段より15万ほど高い。

「そうですか。それでしたら少しお待ちください。」

と言ってその場で店長に電話をかけた。

「もしもし。」

「もしもしお疲れ様です。」

「いくら?」

「◯◯万です。」

「わかった。じゃーお客さんに車の売買契約はその値段だったら今できるのかの確認と車の入庫日がいつになるのかの確認をしろ。電話はつないだままでいい。」

「わかりました。」

とお客様に

「◯◯様、仮になんですがそのお値段でしたら売買契約は今できますでしょうか?それと、仮にご売却されるとしたらお車を手放すのはいつ頃になりますでしょうか?」

「車を手放すのは一週間ほど待っていただきたいですね。次の車が来週きますので。契約の方は他社さんの値段をまだ聞いていないので本日中には決めるつもりですが今はまだできません。」

「わかりました。」

その旨を店長に伝えると

「わかった。じゃーお客様にその値段を保証するので今この場でお前と契約してくれるようお前なりのやり方で頼め。嘘はつくな。」

「わ、わかりました。」

お客さんに向き直ると僕は

「◯◯さん。気分を害されたら大変申し訳ないのですが◯◯万円は保証いたしますので僕と契約していただけないでしょうか?」

「今、この場でですか?」

「はい。本当に嘘はついておりません。僕たちが出せる精一杯の金額です。なんとかお願い致します!」

と言って今までにないくらい深々と頭を下げた。

お客さんは少し上を向いて考えるそぶりをしていた。

10秒くらいたって

「そうですね、わかりました。いいですよ。それではあちらの方たちに断りを入れてくると思いますので少し待っててください。」

と言われた。

 

 

 

 


嘘ん。

 

 

 

正直なことを言うとお願いしてみたはいいものの心の中ではどうせ断られるだろうという気持ちがかなりでかかった。

こんなあっさりしていいのだろうか。

結構な大金なのに。

 

お客さんは中ボスたちの方に行って何か話をしていた。

中ボスたちは何か言い返しているみたいだった。

僕はその間に店長にその旨を伝えた。

「店長!契約してくれるみたいです!」

「あっそ。よかったね。」

「ありがとうございます!」

「だから契約させてやるって言っただろう。」

「はい!」

そのあとは店長に契約条件や契約書類などの小難しい話をされ、それを必死にメモに取った。

「オーケー?わかった?」

「はい!なんとか。」

「じゃーそれが終わったら帰ってこい。じゃーな。契約おめでとう。」

「わかりました!ありがとうございます!お疲れ様です!」

 


お客さんは中ボスたちとの話が終わったみたいでこっちに戻ってきた。

「ありがとうございます!!」

僕がそういうと

「はは。まあどうせなら気持ちよく売りたいからね。実は知り合いにディーラーがいてね。だいたいこれくらいついたらいいかと決めていたからね。それでネットの一括見積もりに登録したらね、いろんなところから電話がかかってきて面倒だからこの時間に来てもらったんだ。」

「そうなんですか。なんか申し訳ありません。」

「それにねあの人たちは私と直接話をしようとしなかった。事務的なことだけを聞いてこっちの腹の中を探ろうとしてたからね。まあ営業だから当然かもしれないけど。別にお金に困っているわけではないしね。気分は良くないよね。◯◯さん(僕の名前)が上司に何を言われていたか大体の予想はつくけど君は少なくとも僕の腹を探ろうとはしていなかった。まあ単にそこまで経験がないだけかもしれないけどね。笑」

と言ってくれた。

「まだ駆け出しなので。ですけど、本当にありがとうございます!!全力を尽くしますのでこれからも宜しくお願いします!!」

というとお客さんはお客さんは少しはにかみ、契約条件の話しに移った。

店長に言われた通りに契約条件と契約書類に署名をいただき、全てが終わると

「この度は本当にご契約ありがとうございます!」

「うん。また何かあったら頼むよ。あと洗濯は毎日するようにね笑」

「はい!気をつけます!また何かあったらいつでもお呼びください!!駆けつけますので!!」

「わかりました。それじゃーもうこのくらいでいいかな。」

「はい。お車の引き取り日になったらまた出向かせていただきますので宜しくお願いします!」

 

と、挨拶を済ますとお客さんは背を向けて自宅に戻っていった。


その背中に僕は深く頭を下げ続けた。

 

 

 

今日はこの辺にしておこう。


このお客さん、カッコよかったなー。

俺もこんな人になりたいなーって思った。

多分部下からの信頼も厚いんだろうな。

続きはまた明日書こう。

 

お休みなさい。